2012年2月26日日曜日

人形峠

 人形峠と聞いて、ウラン鉱の里とわかる人は少なくなった。岡山県と鳥取県の県境にある峠である。ここに、ウランが濃縮した地層がある。日本では、ここと、岐阜県の東濃地区の2箇所である。ウランはもともと花崗岩などに入っている。今、問題になっている自然放射能の高い低いが地域によって違うのは、この花崗岩によるところが多い。ウランの鉱山になるためには、ウランの多い花崗岩が風化し、水に流され、堆積物として濃縮しないといけない。世界のウラン鉱山もほとんど、そのような成因である。このウラン鉱山跡の地下水移動をしらべた。日本の未来を託した鉱山も汚染の問題にさらされる。なんともやりきれない。すぐ近くの三朝温泉は放射能の効用をうたって有名である。
 日本には廃鉱が多いが、その跡地調査もいろいろとやった、廃坑を利用した石油備蓄など、リユースの考え方をいろいろな分野で考えたい。

2012年2月22日水曜日

オープンクラック

 岩盤の調査をしていると、オープンクラックが問題になることがある。川に水を溜める施設の調査をしていた。サイトの河岸が出尾根状の地形をしていた。何だか心配であったので、ボーリングと試掘坑道を掘った。岩盤がぱっくり開いたオープンクラックが出てきた。このオープンクラックがどうして出来て、どこまで続くか調べないといけない。
 そうしないと、水が漏れて水がたまらない。たまったものではない。
 クラックにバスクリン入れて、どこに出るかいろいろと見て回った。そうすると大体斜面の出尾根の範囲に収まった。つまり、出尾根部は重力で斜面に沿ってずって岩盤にオープンクラックが入っていることがわかった。
理由がわかれば、対策は出来る。ひとまず、一件落着である。

2012年2月20日月曜日

温泉開発

温泉を出して欲しいというの相談もあった。元々温泉宿であったが、湯量が減ってきて困っているとのこと。大学の先生にも相談したが、ここを掘れというだけで調査費用を持っていく。もう少し科学的に説明して欲しいという依頼である。
 すぐに、現場を歩き回って地質の分布、地質構造を調べた。その結果から、水理学的考察を行い温泉の出そうなところを決め、宿の方に説明した。粘土のある断層・岩盤の開口割れ目系・褶曲構造の交差・大小地形特性などを用いてここしかないよと結論した。たいそう納得してもらって、すぐに温泉井戸を掘って欲しいということになった。費用は何千万である。了解してボーリング機械を手配しようとしたが、うまく空いている機械がなく、少し待ってもらっていた。
 1ヶ月くらいして、温泉宿から連絡があり、ここがよいといわれた箇所を試しに重機で掘ってみたら、温泉がでたという。まさか、そんな表層で温泉が出るとは思っていなかった。何百m掘ってあたるかどうか心配であったのだ。なにせ、温泉はみずものである。あたらないこともある。とりあえず、よかったですねと答えたが、何千万円損をした格好である。技術力がありすぎるのも時に損をすることがある。その宿からは、一泊無料の招待状がきた。これでよしとすべきであろう。

2012年2月18日土曜日

水開発

国際的には水資源は、貴重な資源でそれによって戦争も起っている。日本では、きれいな水が豊富にあり、水に対する欲望が比較的少ないように思う。水道水がそのまま飲める国はすくない。その、日本でも渇水年には、水の取り合いになる。平成6年の渇水は厳しかった、四国の早目浦ダム底が見えたほどだ。水開発では、ダム・井戸などを計画することが多い。ダムの話は後にして、どこに井戸を掘れば、良い水がたくさん取れるのだろうか。
広域に地形・地質を調べて、大体の候補地を選び、ここと決めた位置で、電気探査やボーリングをして可能性を探る。いけそうであれば、実際の井戸を掘って揚水試験などで実用性を確かめる。私もいろいろな水源の調査をし、成功例のほうが多い。谷出口の礫質な地盤はまあ良好だが、なかなか質の良い水を必要量とる井戸を探るのはむつかしい。

2012年2月13日月曜日

岩盤の水

岩盤の水は難しい。水資源を岩盤内の地下水から求めるには工夫がいる。ある大きな盆地で新しい井戸の開発計画があった。谷出口の厚い礫層の開発はほぼ終わっていたので、それより上流の岩盤に水源を求めた。ちょうどころあいの断層があったので、その断層を抜くことにした。
断層といっても粘土だけの断層や、割れ目の多い断層があり、割れ目の多い断層を抜くのがよい。しいて言えば、水を取りやすい被圧しているのがよく。深い水は、ミネラル分も多く、水質も良好なのが良い。基盤が花崗岩などは水質が良く最適であろう。要求される水量を確保できる井戸を掘るには、事前の調査や経験が必要である。

2012年2月9日木曜日

地下ダム

地下ダムとは何でしょう。ダムは、川をせき止めて貯水池を作るが、地下ダムは、地下水をせき止めて地下に水を貯留する。新しい考え方のダムで、周辺環境に与える影響も少なくてすむ。現在運用されている宮古島の地下ダムは農業用水ではあるが、現地にいってもどこにダムがあるかわからない。ここでは、基盤の水を通さないで泥岩の上に載っている空隙の多い琉球石灰岩を貯留層にしている。成功例であろう。
水の足らないところは、島嶼部や半島部であり、大きな川がなく川に水をためにくいので、渇水年になるといつも困ることになる。房総半島では、利根川の水を延々館山あたりまでひっぱっている。長崎県の半島部では地下ダムの実証試験が行われた。私の係わったのは瀬戸内の島で、実用化できないかということである。いろいろ調査したが、地下水のためやすい川の下流部では、元もと地下水が高く、水をためる容量が少ない。また、海に近いと地下の塩水化の問題もある。川上流部のダムと連携利用すれば、何とかなりそうではあった。その他、全国の地下ダム適地の検討も行ったが、なかなか良い適地がなかった。
発想は良いのであるが、実際の自然条件はむつかしい。

2012年2月6日月曜日

タトラス山地の裂け目

 山の尾根を縦走していくと、時に尾根がとなりあわせで2つ並んで走っているところがある。これは不思議である。山は削られるので先のとがった一筋の尾根が延びるのが普通だからだ。なぜだろう。差別侵食か活断層かいろいろと原因はあるが、尾根が避けて尾根ごと滑り出しているのが多いことがわかってきている。我々はこれを2重山稜と呼んでいる。タトラス山地を縦走したとき、まさにこの裂け目を見ることが出来た。ここは、2重山稜を始めて認識した場所でもある。
この2重山稜は世界中や日本でも良く見ることができる。2重山稜は最近話題になっている深層崩壊の赤ちゃんでもあり、大規模な斜面崩壊を考える上で重要な地形といえる。

2012年2月4日土曜日

ネパールの世界の屋根

ネパールには、よく行った。なんといっても世界の屋根である。なかなか高い山へはいけないので、カトマンズ盆地やポカラ盆地から白い峰を眺めるだけであるが、壮観である。
フライトでエベレストを真近でみたが、すばらしい。
この世界の屋根が、気象上日本の梅雨を作り出し、日本海の豪雪の原因となっていることが最近わかってきた。最近起こっている中国の地震もこの屋根を作ってきた力が横にはみ出したものである。鶴の仲間もこの屋根を越えて渡りをするのであるが、さぞ大変であろう。気候といい、地殻変動といい、生物にとっても、大きな影響を与える世界の屋根である。

2012年2月2日木曜日

ネパールの応用地質

ネパールでの調査を5年間程度飛び飛びに行った。道路斜面のハザードマップや世界遺産の斜面保全,地震防災の問題である。大学の研究に参加させていただく格好であり,その中で国際会議の発表や座長などもさせていただき大変勉強になった。ネパールでの友人も増えた。ネパールは日本とよく似た地形・地質の山国で,日本の地質防災技術は大変に参考になることがわかった。もちろん高価なハードの対策技術は難しいが,フトンカゴや植生を考慮した斜面安定技術,あるいは減災のためのソフト技術はすぐにでも使えると判断した。