世界中に地すべりはあるが、日本には地すべりが多い。どうしてかと言うと前回話たように日本の地質は複雑で断層などの弱層が多い。地形も急峻で雨や地震・火山噴火が多いからである。では、地すべりってなに。
日本では、地盤がゆっくりと繰り返して動く現象に限定しているが、海外ではランドスライドと呼び、日本で定義している地すべりの他に崖崩れ(崩壊)や落石、土石流なども含んでいる。海外の会議ではややこしいがどうしようもない。
では、地すべりはどうして起こるのか。原因を専門の技術士は、素因と誘因に分けて考えている。素因は、地形や地質・地質構造などのもともと地盤にある要素で、水の集まりやすい地形とか、断層・温泉粘土などすべりやすい地質があるとか、流れ盤やオープンクラックなどの地質構造であるとかだ。これらのことは、むつかしいので専門の技術士が調べる。誘因は、皆さんのよく知っている豪雨や地震・火山噴火などで、素因のある地盤を動かす推進力だ。この2つが重なると地すべりが動くことになる。雨や地震で地すべりが動くのはこのためである。ですが、動くには素因があるのです。これを事前に知っておくと、地すべり災害の長期的な予測が出来る。ハザードマップも作れる。国の防災科研では、全国の地すべり地形マップをHPで公開してるの参考になる。県では、実際、法律に基づき地すべりの危険のある箇所を地すべり防止地域に指定して対策工をおこなっている。
さて、日本の地すべりをタイプで分けるとどうなるか、古くは小出先生が、地質によって破砕帯地すべり、第三紀層地すべり、温泉地すべりの3つに分けている。地すべりは、繰り返し起こるので、その発展過程により分類することも行われている。要は、始めは固い岩盤が、地すべりを繰り返すことにより柔かく土砂のようになっていく過程を分類するのである。では、なぜ地すべりが始まるのか。この問題は初生地すべり問題として研究が行われており、かなりわかってきているが、残された問題も多い。
この最前線の問題は、私も係わっているので、いずれ書きたいと思う。
それでは、地すべりと崩壊の区別はどうなのという疑問が浮かぶでしょう。浮かば無い人は、あまり技術的な関心がないですよ。読み飛ばし期間ですね。実は、定義はいろいろと作っている。地すべりはゆっくり、繰り返し現象で、崩壊は急で、一過性現象とか。ですが、実際の自然現象はどうしても漸移的で境界部分ははっきりしません。ですので、国際的にはランドスライドと一括しているのだと思う。我が国では、どうしても専門家がムラを作りやすく、その中で「学問」だけど「道」(たとえば、華道や柔道など)に入っていく傾向があるようです。ちなみに地すべり学会があるのは世界中で日本とネパールだけで、ネパールの地すべり学会設立には日本の技術者が多く係わっている。ある意味、日本は地すべりの先進国というわけである。それはさておき、次回は深層崩壊などで注目を浴びている崖崩れについて話をしましょう。